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ひむか共和国の話題

久喜さんと命の話

Posted on 2014-07-10

椎葉村 尾八重

命を見つめ、慈しみ、育み続けてきた八十年
椎葉の久喜さんなら 人も動物も植物も、ついみんな言う事をきいてしまうのです。

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牛たちが集まってくる。谷の放牧場、那須久喜さんは母牛に種付けして、生まれた子牛をある程度まで育てて出荷する繁殖農家。ここにいるのは母牛と去年ま でに生まれた子牛たちだから怖くはないと自分に言い聞かせてはいるものの相手は何頭もの子牛を産んできた肝っ玉母ちゃんぞろい、訪問者は久喜さんのかげに 隠れるように遠慮しながら写真を撮らせていただいた。
久喜さんが思い出を語る。
ある二月の寒い朝、出産を控えた母牛が凍てついた地面に 足を滑らせ転倒し足を骨折、再び立つ事が出来なくなった。獣医と相談してやむなく子牛の命だけを救うことにした。未熟なまま生まれてきた子牛が寒さに凍え ないように、久喜さんはそれから幾晩も牛小屋に子牛を抱いて眠り続け、なんとかその命をつなぐ事が出来た。久喜さんにとって牛は、いや犬もニワトリもミツ バチだって家族なのだ。

もう一つ命の話。
平成16年頃から全国的にミツバチが激減した時期がある。蜂蜜の生産だけでなく農作物の受粉にも影響が出るほどに日本列島からミツバチが姿を消したのである。
九州山地の奥深く、見渡す限り森林の続くここ椎葉でさえその影響を免れなかった。山々や畑の様子も、空の色も谷川の水も何も変わっていないように見えたの に、ミツバチだけが数を減らし始めた。そしてその翌年、その次と2年間はついに一匹のミツバチさえも久喜さんの巣箱を訪れなかったのである。
もう二度とミツバチは戻ってこないかもしれない、あきらめかけていたていた3年目の10月18日、日付もその時の状況も克明に覚えているという。一匹のミツバチが仕事をしていた久喜さんの唇にとまった。

驚き手にとって「どこから来た?どこから来た?」と尋ねているところへ、妻の久子さんが知らせにきた、一つの巣箱に10匹ほどのミツバチが来ているという。時刻は午後三時半、慌てて巣箱に駆けつけると間もなく、ミツバチの群れが羽音をたてて引っ越してきたのである。
その秋、久喜さんはか弱い唯一のミツバチの群れを守るために、以前とっていた蜜を含んだ蜂の巣をエサとして巣箱に補給しながら、まるで子牛を毛布でくるん で一緒に寝た時のようにミツバチたちを守った。翌年その一つの群れは、なんと二十もの群れに分かれて、それぞれに久喜さんの準備していた巣箱に入ったので ある。たった一匹のミツバチが知らせた一つの群れから・・・再び山や畑にミツバチがあふれたのである。

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それほど工夫をしているようには思えない久喜さんの巣箱をミツバチたちが選ぶのは・・・やはり愛情のせい?と思えてしまうから不思議である。

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蜜と花粉を集めて帰ってくるミツバチ、その一匹一匹を慈しむように見つめる久喜さんだった。久喜さんはミツバチの群れを素手で抱える事も出来るが決して刺される事はないそう。

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久子さんとは仲むつまじい夫婦、二人の子どもに望む教育を受けさせると決めて働いてきた。今は孫の成長、活躍が楽しみ。夫婦の慈愛に満ちた人生はその笑顔ににじんでいる。

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誰が来てもふるまわれる産まれたてのゆで卵、蜂蜜は巣ごと食べる。ミツバチたちの気の遠くなる働きの結晶を心していただく。


椎葉村尾八重 松木地区の優しい三人は、
あら不思議『久喜さん、久子さん、喜久子さん』でした

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「おとうさんがこの民宿をのこしてくれたから」

久喜さんの家の下には緑に囲まれて、森の民宿『龍神館』がある。手打ち蕎麦や、優しい味の山菜料理、静かで清潔な部屋を提供してくれるのは椎葉喜久子さん。
林業家だったご主人に嫁ぎ山仕事をしながら子ども達を育て、夫婦で協力して民宿を開業した。ご主人は先に天国の人となった今、喜久子さんは毎日「おとうさん」に感謝しながら、時に心で語り合いながら、県外から多く訪れる登山者や釣り客を心からもてなしている。
「おとうさんがここを残してくれたから生きて行ける」と。

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