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ひむか共和国の話題

炎は消えず残った

Posted on 2015-01-12

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静まり返った里山の夜明け前、黄金色に輝く炭焼き窯の中から白や黄色や時には青紫に揺らめく炎が勢いよく噴き出し、ごうごうと音を立てる。熱く、堅く焼き 締められた備長炭は掻き出されるたびに「キンキン」と金属のような音を立て、冷たい十二月の空気の中にあって、窯の口の周りだけがオレンジ色に照り返さ れ、働く人たちは汗ばむほどの熱気に包まれていました。

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土と石で築かれた窯に、樫の木を詰め、ただ一度火をつける。他にはなんの材料も燃料も用いることなく、一ヶ月以上その火を巧みに操ることだけで宇納間備長炭は生まれる。
窯出し直前に行われる最後の工程、『煉らし』は余計なガスや樹皮を燃やし切り、さらに窯の温度を千度以上に上げることで、炭をさらに堅く、強く、純粋にする。

時代の流れとともに、一時その勢いを無くそうとしていた炭焼きの炎は今、県外からの移住者という新たな担い手を得て、未来に向けてその勢いを再び増そうとしています。
美郷町北郷、穏やかな山並みと美しい里山の風景が広がる、愛すべき田舎を訪ねました。

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宇納間備長炭は、火持ちが良く、遠赤外線効果で焼き鳥などの料理を特に美味しく調理できることから、全国の料理店で使われる質の高い木炭。
和歌山の紀州備長炭、高知の土佐備長炭と並んで、日本三大白炭と評価されています。
原木の大きさに比べると、太さで約半分、長さで約3分の2まで小さく焼きしめられる。切り口は金属のように輝き、目を凝らせば年輪までしっかり見えて、その美しさに見とれてしまうほど。

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佐賀県出身で炭焼歴8年の狩峰さん、その奥さんから連絡が入る。
「使っている三つの窯のうち一つが、今日か明日には窯出しになるので、よかったら見に来て。」
すぐさま訪ねるが、まだ煉らしの最中。「もう少し時間がかかるね。窯出しは明日の明け方からかな?」
大きな体に髭をはやし、いかにも山の男の風貌を持つ狩峰さんは、にこやかに教えてくれる。
「炭 焼きは、初めの一ヶ月間、窯の一番奥の天井に開けた小さな穴から出てくる煙の色と、漂う匂いだけで窯の中を想像するんだよ。乾燥がうまくいってなかった り、火が強く上がりすぎたら失敗になる。どんなに慎重に焼いても焼きあがる炭は毎回違う。納得のいく炭なんて一生できないんじゃないかな?今回のこの窯も 怪しいんだ。火上げに失敗してね、、、」
その小さい穴のことを『しょうじ』と呼ぶらしい、(生死)と書く。なるほど、炭の生き死にを左右する大事な穴なのだろう。
そこに地元の炭焼き、上杉さんが様子を見に来る。狩峰さんや、他の若いIターン者たちにも炭焼きの技術を伝え、一緒になって手伝ってもくれる頼りになる先輩。今は少し広く開けられた焚き口から真っ赤に燃える窯の中を覗き込んだ後、言った。
「これは、、、もう窯出しできる。帰って一眠りして、夜中から始めたほうがいい。」

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明け方、3時に再び窯を訪れると、もう既に小屋は熱気に包まれていました。ひとしきり真っ赤に燃える炭を出し、『すばい』と呼ぶ灰をかける。炭の火が消 えて手袋をした手で掴める温度まで冷やす15分くらいの間、椅子に座って休憩する。炭が冷えたら、太さや長さごとに揃えてカゴに入れていく。この繰り返し が延々と10時間以上も続く。

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400年前から夫婦や家族だけで協力して、淡々と続けられてきた炭焼きの作業も今、少しずつ変わろうとしている。それは、狩峰さんのような、炭焼きに携 わる移住者が増えたから。炭焼きは勿論、林業や田舎での生活に全く無縁だった人たちが、ここで炭焼きを仕事としていくには、地元の人たちの理解と協力が不 可欠。住む家、窯、何トンにも及ぶ原木の確保。そして何より地域の住人として受け入れてもらうこと。その過程の中で、お互いが協力しあって、共同で作業し ていく流れが生まれてきた。
出荷先の違いや集落ごとでつながりの少なかった炭焼き同士の交流も生まれ、宇納間備長炭を文化財として後世に残して いこうとする保存会を設立するまでに至った。高度成長期には10世帯ほどに減少して、このまま消えてしまうかに思われた炭焼きの炎は、現在は約40世帯に 増え新たな輝きを増そうとしている。

頬を真っ赤にして窯に向かう狩峰さん夫婦。その様子をしばらく後ろから見ていた上杉さんの少し心配 そうな、それでいてどこか満足げな優しい眼差しは、多くの移住者を受入れ、一緒に炭焼きの炎と愛すべき里山の暮らしを守っていくことを決めた北郷の人たち の懐の深さと、根っからの優しさを象徴しているようでした。

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