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ひむか共和国の話題

北郷の昼下がり

Posted on 2015-01-12

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ある昼下がり、大阪からのIターン者で炭焼きを営む柄さんの家に子育て中のお母さんたちが集まっていた。皆、県外から北郷に移り住んだ家族ばかり。この日は共同で栽培した大豆の収穫日。ついでに手作りのパンやお菓子で一緒に昼食。
子どもたちは寒空の田んぼに駆け出して遊ぶ。お母さんたちは思い思いにお茶を飲んだり、編み物をしたりしながら会話している。田舎ならではの、オーガニックな暮らしを心から楽しんでいる様子。ゆったりと暮らし、おおらかに子どもたちが育っていくのだろう。

薪ストーブに当たりながら柄さんに話を聴く「地元の人たちが残してくれたこの環境と、この生活に心から感謝しているんです。ここでは、ひとつひとつの行動と生きていくことが直接つながっている。これからも北郷の暮らしと環境を残していきたいと思います。」

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思い思いにくつろぐ昼下がり。

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収穫した大豆はみんなで味噌に仕込む。

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柄さんの窯場を覆う屋根の材料になる竹。

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柄さん家族が暮らす古民家。立派な造りの建物もこの地域の宝物だと柄さんは語った。

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柄さん

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帰り道に、神奈川出身で大工の日比野さんを訪ねる。自分のペースで子どもたちに使ってもらえるような家具や遊具を作っていきたいと、語ってくれた。

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この田舎では、今まで見過ごされてきた何かが、新しい価値として見直されようとしている。それは実は普遍的で、しかも今の日本にあってはとても先進的な価値感なのではないかと思えて仕方ありませんでした。

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民宿『まろうど』

Posted on 2014-11-03

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宿泊は秋元の民宿『まろうど』
「まろうど」とは客人という意味。
秋元集落の奥まった山の斜面に建つ古民家の宿は、ここを運営する飯干淳志さん一家の住居でもあり、どぶろく『千穂まいり』を醸造したり、高千穂の市街地でスイーツ店『ansoreiyu』を経営したりする『株式会社高千穂ムラたび』の拠点でもあるのです。

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家族の宿

古民家をリフォームした食堂には仏壇やご先祖様の遺影がそのまま置かれているし、玄関のホールには大きな梁が黒光りしている。
隣のダイニングでは、つい3週間前に産まれたばかりの甚咲君が泣き声を上げ、従兄弟の小学生拓海君がお母さんの綾佳さんと、ひいおじいちゃんの光雄さんとテレビを見ている。そこにインターンとして住み込みで働く鳥取大学3年の神崎恵里さん‥‥他に飯干家の三女で甚咲君の母であり、『ansoreiyu』の店長でもある絵里子さん、その旦那さんの佐伯勝彦さん‥‥なんとにぎやかな家だろう、‥‥‥ふぅ。

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どぶろく造りの責任者の佐伯さんは、もともとは町外出身の警察官。高千穂の交番に勤務していた時に淳志さんと縁があり、どぶろく作りの立ち上げから手伝うこととなった。そして今は飯干家の一員。お酒はあまり飲めないので、自分も楽しめるようにと開発したアルコール無しの米発酵飲料『ちほまろ』は人気商品になった。ここでは家族みんなで協力して、新しいものが次々と産まれているようです。
もちろん、民宿もみんなで協力して‥‥‥
埼玉県から6名のお客さんが到着すると、裏方として台所を切り盛りする飯干家のおかみ、真弓さんが、こんな山深い里とはとても思えないくらい上品な創作料理を盛りつけ始めました。

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フルコースにびっくり
オードブルに秋元のゴボウのバルサミコソテー、ウドの生ハム巻き。おからの和え物には粉チーズを、さっき庭先で摘んだばかりのシソの実やウドの花のてんぷらは釜炒り茶の塩でいただく。日之影の栗のポタージュは「超」が付くほどの絶品。メインは高千穂牛の煮込み。デザートの栗のケーキが運ばれてくる頃には、全員至福の笑みと共に意外の顔。
「こんな美味しいごちそうが出てくるなんて‥‥びっくりです。」
そういえば夕方、話を聞いたとき淳志さんは言っていました。
「役場に在職していた頃、ヨーロッパを見て歩くチャンスをいただいた。そこには地域の歴史や資源を活かして多くの人が訪れている魅力的な町があった。私は今、この秋元の資源を活かして新しいムラの魅力をデザインして、実践しているところなんです。『田舎の宿』を想像して来られるお客さんたちの期待を、良い方に裏切ること。それが本当に満足してもらえるという事でしょう。」
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淳志さんのプランはまだまだ始まったばかり、この素敵な家族を中心に、新しいムラの魅力はどんどん大きくなっていくでしょう。『まろうど』に泊まると、そんな未来も見えてくる。ただ美味しいだけではありませんでした。

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民宿 まろうど
宮崎県西臼杵郡高千穂町向山6604
電話:0982-72-7226
http://takachiho-muratabi.com

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秋元集落へ

Posted on 2014-11-03

さて、本日の最終目的地、高千穂町の秋元集落に入ります。国道218号からはそれほど遠くなく、対向車に気をつけながら車でゆっくり走っても20分はかかりません。集落の入り口は水車が目印。

小さい流れに沿うように30軒余りの家が点在するこの地区の住民はみんな飯干という姓。「飯干さん!」と呼ぶと皆が振向く。
そこで各戸には「いろはにほへと‥」の『かな番地』と屋号がついている。どうりで、無人販売所の商品にはそれぞれに「いろは」の文字と値段の書かれた札が貼られ、集金箱らしい木の箱にもお金を入れる為の穴がたくさん。これで、品物を出した人に間違いなく売り上げが届くシステムなんですね。

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回収率100%以上
地元でとれた野菜だけでなく、米まで売られているこの無人販売所『いろはや』では、売れた商品の金額以上のお金が集金箱に入っている事があるそうです。
つい多めに入れてしまうのか、間違いなのか分かりませんが、少なくともズルをしようなんて気持ちにはなれない雰囲気が秋元には満ちていました。

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古民家のめしや『しんたく』で昼食。
小麦から自分たちで育てた純自家製のうどんは懐かしく素朴な味わい。

隣の席に座っていた若い女性は山口大学の学生さん、卒業論文のフィールドワークで秋元の人たちの暮らしを調査しているという益村澪さん。遠くからでも人を惹き付ける魅力が秋元にはあるらしい。
『しんたく』代表の飯干貴美子さんも交えて秋元の話をしながらくつろぐ間に、他のお客さんたちも数組入れ替わりで食事をして行った。

貴美子さんたちがここを立ち上げた時に願ったこと、「よそから訪れた人が気軽に寄れて、そこに地元の人たちも集まって、皆が交流できる場所を作りたい。」という思いは、着実に形になりつつあるようです。

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パワースポット『秋元神社』
更に進む。秋元集落の一番奥、背後の断崖と巨木に囲まれてひっそりとたたずむ小さな社がある。境内には御神水が湧き出し、拝殿が鬼門(北東)を向いていることから大きな力が宿ると言われる秋元神社。車一台がやっと通る細い道の先、飾り気のない質素な小さい神社だけど、確かに、たくさんの人が訪れるパワースポットと言われるだけの神聖な空気に包まれていました。

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川沿いの道を少し上流へ行った橋の上で、熊本からの釣り人がつり上げたかわいいヤマメ。その色の鮮やかさに驚かされて思わずカシャリ。
この天然の美しさも、人を引きつけて止まない秋元の魅力の象徴のような気がしました。

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古民家のめしや しんたく
宮崎県西臼杵郡高千穂町向山秋元
電話:090-8224-7398または090-5087-7793
営業時間:11:00〜15:00 不定休

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「栗がわらう」って、知ってましたか?

Posted on 2014-11-02

「栗がわらう」って、知ってましたか?

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高千穂から国道218号を東に向かい、日之影町に入るとすぐに巨大な日本一長いアーチ橋、『天翔大橋』が目に飛び込んできます。
橋の向こうは向山地区と呼ばれ、橋が出来るまでは文字どおり深い谷に隔てられていた、向こうの山の地域。4ページの写真のようにマチュピチュの空中都市を彷彿とさせる農村が点在し、絶景が続きます。

通りがかりに栗を拾うおばあちゃんに話かけてみる。馬崎エイ子さんは七十七歳、夫婦で育ててきた栗を今は一人で収穫する最盛期。

「ほら見てん、あっちも栗がわろちょんなる。」

どうやらイガがはじけて実が顔を出した状態を言うらしい。汗だくの顔をほころばせて笑うおばあちゃんの顔を見ていたら納得できました。

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もう一人笑顔のはじける元気な人、日之影の栗を活かすため、全国で飛ぶように売れる栗きんとん『栗九里』を作る甲斐喜夫社長。

「地元の農家さんから栗を少しでも高く買えるように付加価値をつけて売りたい。」という思いから、美味しい栗きんとん作りを研究し、全国に営業して、今では北海道の顧客もいる。  高齢化や跡取り不在で維持が出来なくなった畑は栗の木ごと借り受け、管理と収穫を行って賃料を支払う。そうすれば将来、後継者が帰って来た時すぐに生きた畑としてお返しできるから。栗きんとん作りは日之影の栗を守って行くために興した事業なのです。

最盛期のこの時期には50人もの人を雇い、次々に持ち込まれる栗を加工する。手作業で渋皮を除き、粒をあえて残して食感にこだわり丁寧に作られる栗きんとんは、リピーターから何週も先の分まで予約が入るほどの人気。  なかなか手に入らない『栗九里』だけど天翔大橋を渡ってすぐの、「マロンハウス」を訪ねて行けば笑顔で譲ってもらえるかもしれません。  食べればあなたも笑顔になる事受け合いです。

日之影では栗が笑う、人も笑う。

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マロンハウス・甲斐果樹園

宮崎県西臼杵郡日之影町岩井川642

電話・FAX:0982-72-7422/0982-72-2223

 

 

 

 

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日本一の鉄道橋の真ん中で 膝がカクカク

Posted on 2014-11-02

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大人気、スリル満点

高千穂で、人気のアクティビティを体験する。2005年の台風災害で廃線となった高千穂鉄道の一部を、スーパーカートと呼ばれる小さな車両に乗って走る『高千穂あまてらす鉄道』。
むき出しの荷台のような座席に座って二つのトンネルや爽やかな森をゆっくり通り抜けて行きます。

鉄道橋としては日本一の高さ(105メートル)の高千穂鉄道橋を渡る時には、「そ、そんな簡単に行ってしまうの?」と、さすがに膝がカクカク‥‥

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トンネルの中ではこんな演出も・・・

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おいしい景色は美しい

Posted on 2014-11-02

五ヶ瀬〜高千穂〜日之影へ

ルート218を行く 絶景と秋の恵みにつつまれる小さな旅のレポートです。

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酸っぱいブドウでフランス気分

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熊本県から宮崎県北への小さな旅、その玄関口になるのが、阿蘇の東側に位置する県境の町五ヶ瀬町です。国道218号線で宮崎県に入ったらすぐに、五ヶ瀬ワイナリーを目指して左折します。しばらく行くと、そこは広大な高原の広がる桑野内地区。阿蘇も九州山地も同じ高さに見渡せて、ここが九州のど真ん中だということを感じることが出来る場所。秋の夕暮れにはきれいな夕陽が眺められる絶景ポイントでもあります。

今年の全国茶品評会で日本一の評価を得た『五ヶ瀬釜炒り茶』の茶畑がきれいな模様を織りなし、斜面に開かれた畑ではワインの原料になる小粒で可愛いブドウがたわわに実っていました。

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畑で収穫の準備をしていたお母さんに許可をもらって一粒食べてみると、酸っぱくてどこか懐かしい味。広々とした丘陵の眺めといい、爽やかな風といい、ん、なんだかフランスの田舎を旅している気分だぞ。

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桑野内の最も見晴らしの良い場所に建つ五ヶ瀬ワイナリーではこの季節、できたてのワインが目にも美味しく出迎えてくれます。今夜の宿で飲む一本と、お土産にもう一本‥‥あ、時間はまだまだ午前中、夕陽を待っていたいけれど、それは次回の楽しみということで、さ、高千穂を目指して、一旦国道218号に戻り、一路東へ向かいます。

 

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夏号、送らせていただきます!

Posted on 2014-08-28

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ひむか共和国のページをご覧いただいてありがとうございます。

情報誌『himuka』第1号に関して、皆さんからあたたかい感想やメッセージをいただき、本当にありがとうございました。
ただ9つもの自治体が共同で発行すると言う特殊な事情、従来のいわゆる観光情報誌とは異なるアプローチの取材やデザインのために、目に見えた効果を必要とする行政の舞台では、その評価の仕方に戸惑いもあるのが現状です。
次号も前回同様にこの地域に根付いて暮らし、大切なものを守りながら、穏やかに外の人たちのとの交流を続ける人たちのあたたかいストーリーを、ゆったりとしたトーンで紹介していくために、皆さんに後押しをお願いします。

もっと多くの方から感想や意見をいただければ、それが大切な評価の物差しになります。ご希望の方には冊子を無料でお届けしますので、お近くの方にも紹介して下さい。是非、右の応募フォームから冊子送ってのコメントをお寄せ下さい。在庫限りですが、できるだけ多くの方に読んでいただいて、この地域の良さを知っていただけますように。

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ソラシドエア『ひむか共和国号』就航セレモニー

Posted on 2014-07-29

本日7月29日、台風のため延期になっていた「ソラシドエア『ひむか共和国号』就航セレモニー」が宮崎空港で行われました。

県北9市町村の市町村長さんやゆるキャラ達に参加していただき、テープカット。

搭乗者の皆さんには記念品が送られました。

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むすびカフェ『千人の蔵』

Posted on 2014-07-10

高千穂町  岩戸 五ヶ村

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むすびカフェ『千人の蔵』は
おじいちゃんたちの夢の形でもある

「むすび」とは
人と人とをむすぶこと
昔と今とをむすぶこと
今と未来をむすぶこと
作る人と使う人をむすぶこと
作る人と食べる人をむすぶこと
つまり「暮らす」を
人の手から人の手へ
伝えていくこと

 

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背の高い栴檀と杉の林に囲まれて石造りの蔵がしっとりと佇む。開け放たれた玄関から裏口へ、涼しい風が吹き抜けているのが目に見えるような清々しい空間。

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この5月にオープンしたばかりの「むすびカフェ千人の蔵」運営するのは藤木哲朗さんと濱田典子さん。ふわりと優しく握られたおむすびと2種のカレー、手作りのスイーツにコーヒー、紅茶。シンプルなメニューを丁寧に提供してくれる。
この日はお菓子作りに協力してくれている小林菜美子さんが一歳の美心ちゃんをおんぶして、い草のパウンドケーキ作り。焼き上がったケーキに「ん、美味しそう」と笑う。

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高千穂には『こびる』という文化がある。早朝からの長時間に及ぶ労働、山間部の不便な生活の中で村人たちが編み出した小さな幸せ。昼食の他に、仕事の手を休めて食べる軽食のこと、「小昼」と書く。藤木さんは地元の若者たちが立ち上げた『こびる研究会』のメンバーでもあり、食と農、手仕事、森や水との関わり、つまり暮らしを見つめることをライフワークにしてきた人だからこの場所でむすびカフェを開く事は自然な流れだったのだろう。しかし、ここに至るまでのドラマはもっと興味深い。
そもそも、この石造りの立派な蔵は元からここに建っていたものではない。2009年、隣町の日之影町から移築されたもの。さらに一段下がった広場に建つ民宿『神楽の館』、この大きな古民家も1996年から数年をかけてこの場所に移築されたものなのである。膨大な労力と費用をかけてその難事業を完成させたのは20年前、平均年齢六十歳だった9名、『五ヶ村村おこしグループ』のおじちゃんとおばちゃんたちだった。

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五ヶ村は元々水が乏しく水田の少ない貧しい土地、大正時代に村人たちが土地を担保に借金をして取り組んだ溜め池事業も地質が悪いせいで水が溜まることなく失敗。借金だけが残り、多くの山が人手に渡るという苦い体験は払いきれない雲のように村人たちの心に残ってきたのかもしれない。実りや豊かさの象徴である石の蔵などとは縁遠い五ヶ村ではあったけれど、それだけに村人たちは助け合い、少しずつ田畑を開き、慎ましく生きてきたのである。
平成の時代に入り村に変化の時が来る。町営の温泉が五ヶ村に開業したのである。『五ヶ村村おこしグループ』の立ち上げからこの春まで代表を務めてきた工藤正任さんらはこの温泉を活用して村おこしを進めて行く覚悟を決める。農産物やだんごの販売、うどんなどの食事を提供しながら少しずつ村おこしは軌道に乗って行く。
その後、後継者不足、生活様式の変化で毎年『神楽宿』に選ばれた民家で夜通し舞い続けられてきた夜神楽の存続が難しくなった時、グループは隣町で明日にも解体、廃棄されようとしていた古民家を引き取る事を決める。メンバー個人の出資、借入れ、補助金などをかき集め、3年がかりで村の夜神楽の未来を託す事の出来る『神楽の館』は完成したのである。

六十歳から始めた村おこしは20年目を迎えた。工藤さんは八十歳を期に、グループ設立メンバー最年少であった佐藤光さんに代表を譲った。5年前に一口一万円の出資を募り『千人の蔵』を移築したのは、未来永劫に残るであろうこの石の建物が、千人の協力で建設され、この先もっと多くの人たちが集う場所であり続けてほしいと願ってのこと。
派手な事ではない、生まれた土地に寄り添って丁寧に暮らす、暮らし続ける幸せは着実に若い世代に受け継がれている。
「時代をこえてむすぶ、人と人をむすぶ」それが千人の蔵。

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足りている暮らし

Posted on 2014-07-10

美郷町南郷 渡川地区

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「渡川ONE(ドガワン)の部屋というのがあるらしい。」美郷町の役場でそう聞いた。

閉校した渡川中学校の元校長室がそれである。約束の午後5時に訪れてみると、4人のメンバーが賑やかに迎えてくれた。応接セット、事務机、額、「きっと僕らの内申書も入ってるはずですよ…」という鍵付きの大きな開かずの書類庫。もしここが閉校されてからの9年間放置されたままだったらどんな様子だろうか?と想像しながら話を聴き始めた。
と、すぐに遅れて来たメンバーが入って来る。名刺を交換すると、薄い杉の板の名刺に書かれた肩書は「山師」、赤と白のツートーンのしゃれたデザインの名刺は「簡易郵便局長」。そうか、皆仕事上がりで集まってくれたんだと改めて思う。時刻は午後5時15分。
「でも…皆さん仕事は?もう終わったんですか?」
「だいたいこんなもんですよ。
夜は野球の練習もあるし、消防団もあるし、何も無けれは庭でバーベキューですよ。」
一同爆笑はしているものの、
それは案外誇張でないらしいという予感は数日後には確信になったのである。

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美郷町南郷の中心部から峠一つ隔てて、ダム湖と水の美しい渡川沿いにぽつんと開けた渡川地区は住民およそ300人、その内約100人が40歳以 下の若者と子ども達。超高齢化が進む県北の山間部にあって、この若者の多さは驚くべきこと。しかもそれはここ数年の間で起きた変化だという。この集落のど こにその秘密があるのか?その時には全く見当もつかなかった。

渡川の子ども達は高校進学と同時に村を出る。自宅から通学出来る範囲に高校が無いからである。その後も多くの卒業生たちは都市部に残り、村に戻ってくる若者は少ない時期が長く続いてきた。必然、子どもの数が減り9年前に中学校が閉校、5年前には小学校も閉校が決まった。

当時、盆や正月の度に集まっては故郷の未来を憂いていた若者たちは、小学校の閉校という村にとっては致命的な出来事に背中を押された形になる。特に結束力 の強かった昭和56年生まれの同窓生を中心に渡川ONEを立ち上げ、まずは閉校する渡川小学校の思い出のシンボルとしてTシャツを制作した。渡川が寂しく ならないようにと校庭に多くの鯉のぼりを架け、イベントを開催した。子ども達に渡川の自然の素晴らしさを知ってもらうために『渡川自然塾』を開いた。一世 代若いグループである青年団も当然協力する。父ちゃんや母ちゃんたちも引っ張られる。自然な流れとして村は活気づいていったのである。前後して都会にいた 若者が親の仕事を引き継ぐために帰ってくる、お嫁さんを連れてくる、子どもが増える。いつも笑いが絶えなくなる。
過疎化とか限界集落という言葉の暗さは、 ここには少しも感じられなくなった。

草野球の試合があると聴いて観戦に行く。お嫁さんや子ども達の後ろで、一球、一プレーごとに一番熱 心に声援を送っていたのは彼らのお母さん達であった。一点差のゲームに競り勝ちベンチに戻った瞬間、渡川ONEのリーダーでこのチームでもバッテリーを組 む上村太樹さんと黒木豪志さんの一声で祝勝会が決まる。公民館で焼肉、会費は千円。見事な統率とフットワークで30分後には乾杯、遅くまで賑やかな笑い声 が、谷間の村に響いた。

渡川の元気と活気の秘密、若者が輝いている理由は、結局分からないままだったが、渡川のファンになった事は確か。不思議に思う人は一度訪れてみると良い、そして出会った人に声をかけてみるといい。きっとすぐに友達になれる。
そしてこんな質問をしようとしていた自分が恥ずかしくなるに違いない。
「コンビニがなくて不便じゃないですか?」

いえいえ、これで十分足りているのです。

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